ヘルペスにゲンタシン軟膏が処方されると、何度も再発し感染症の薬をもらい慣れている患者さんは「なぜゲンタシンなの?」と疑問に感じるようです。
確かにゲンタシンはバルトレックスなどの抗ウイルス剤のように、増殖したヘルペスウイルスをダイレクトに抑える効果はありません。ゲンタシンだけで原因ウイルスと戦うことも、早く治すこともできません。
ウイルスに感染した後に身体が不調で免疫力が低下すると、一気にウイルスの数が倍増します。普段体内に潜んでいるウイルスがここぞとばかりに暴れまわり、唇に水疱ができるなど不快な症状が表に出て来ます。
ウイルスを死滅させる薬はありませんが、抗ウイルス剤を使えば早く鎮めることができるので、治療ではウイルスに直接作用する内服薬のバルトレックスなどが処方されます。
ゲンタシンが処方される目的は、主に殺菌です。水ぶくれが潰れると傷口が細菌に狙われやすくなりますので、軟膏で殺菌すると二次感染を予防するのに効果的です。抗ヘルペスウイルス剤との相乗効果で、ゲンタシンが効く可能性があります。
ゲンタシンは安全性が高い軟膏です。抗生物質のゲンタマイシン塩酸塩が主成分なので耐性の問題が気になるかも知れませんが、飲み薬ではなく塗り薬なので患部にちょっと使う分には大丈夫です。
比較的トラブルが少なく、ステロイドを含まない点も安心要素です。けれどネットの口コミなどでも、「ゲンタシンは危険」と言う投稿コメントが目立ちます。
閲覧数、回答数が多く、更新日時が新しい掲示板もチェックしましたが、ゲンタシンを否定するコメントがたくさんありました。その理由は、ゲンタシンと一緒にステロイドのリンデロンが処方される確率が高いからです。
ゲンタシンとリンデロンが処方される時
病院の皮膚科を受診して抗菌薬のゲンタシンとリンデロンの処方箋が作成されたら「来るのが遅かった」と思って下さい。
水疱が出た直後や症状が出る数日前なら抗ヘルペスウイルス薬だけで治すことができますが、症状が出てから何日かすると「手遅れ」になります。
アラセナなどの抗ウイルス剤は発症直後のタイミングで使わないと、あまり効果がありません。抗ウイルス薬は効能を発揮する期限が決まっている薬です。医師が「ピークが過ぎた」と診断した場合、ゲンタシンなどの抗菌薬で二次被害を防ぐ治療方針に切り替えられます。
しかも「ゲンタシンだけではちょっと物足りないかも」と思われてしまうと、ステロイドのリンデロンが処方されてしまいます。ゲンタシンとステロイドがブレンドされたリンデロンVGも処方される確率が高い塗り薬です。
ヘルペスにステロイドは最悪
ゲンタシンはともかく、ヘルペスとステロイドは最悪の組み合わせです。元々アトピー性皮膚炎を患っていると、ヘルペス発症時も高確率でステロイドの塗り薬が出されます。
確かにステロイドはアトピー性皮膚炎の特効薬になる一面もありますが、ヘルペスに対しては「百害あって一利なし」と断言します。ヘルペスは免疫力が低下した時に発症するのに、免疫機能を弱めるステロイドを塗ったら火に油を注ぐようなものです。
ステロイド特有の一時的に症状を和らげる効果は期待できるかも知れませんが、使用するほど免疫機能はガタガタになるのですぐに再発の悪循環に陥ります。
口唇ヘルペスの患部、唇は全身の皮膚の中でも特に薄く柔らかい部分なので、劇薬を塗ると即座に有効成分を吸収し免疫力を奪い去られてしまいます。
リンデロンVGを処方する時、悪質な医師は「赤ちゃんも使えるゲンタシンも入っていますからね」などと言って安心させようとしますが、騙されないようご注意下さい。「ヘルペスを薬で治すのは本当に怖い」とつくづく感じます。
そもそも抗ヘルペスウイルス剤自体にヘルペスウイルスを死滅させる効果はありません。「副作用を我慢してまで使わなければならないの?」と疑問符が点滅します。
性器ヘルペスの治療でリンデロンVGが処方されることもありますが、「できるだけ使うべきではない」と指摘する専門家が大半です。特に女性の陰部は頭皮より皮膚が薄く、子宮と繋がっていることからもステロイドを塗るのはもっての他です。
ゲンタシンの副作用
ヘルペスの薬と比較すると少ないとは言え、ゲンタシンに副作用がまったくないわけではありません。副作用として痒みや発疹、炎症が出ることがありますが、気になる症状が出た時は塗るのを止めて担当医に相談しましょう。
ゲンタシンはヘルペス以外の病気でも出番が多い抗生物質です。ニキビや水虫、生理中に荒れた陰部、虫刺されにゲンタシンを出す先生は少なくありません。
女性や子供にも身近な薬で非ステロイドなのでつい油断しがちです。ゲンタシンを塗った手で目をこすり二次被害が発生するケースも多いので気をつけましょう。健康な皮膚に予防目的で使うのも厳禁です。
ゲンタシンの代わりになる市販薬
ドルマイシン軟膏などゲンタシンの代わりになる市販薬もあります。抗ヘルペス薬のアラセナSと一緒に買い求める方もいらっしゃいます。第一類医薬品のアラセナSは、薬剤師さんに相談すれば薬局で買えます。
ただ、塗り薬は気休めでしかないことは理解しておいて下さい。アメリカFDAも「ヘルペスの市販薬は使わない方が良い」と断言しています。もしどうしても口唇ヘルペスの治癒スピードを早めるために塗り薬も併用したい時は、FDAが唯一承認しているアブレバを使うしかありません。
私もお守り代わりに持っていますが、普段はひと月分で二千円未満で済むリシンサプリのリシン+プラスで再発を抑えることに成功しているので、幸いまだ出番はありません。